パーソルキャリア HiPro Closed Platform部×Third Baseによる相互副業プロジェクトの立ち上げからPMFを目指す2年間―「相互副業」という新しい市場づくりを、戦略からFS・CSまで共に担う。
パーソルキャリア 様
「誰よりも信じ切らないといけないが、視野を狭めてはいけない」―― 立ち上げからPMFへ、2年間の伴走が残したもの
スピーカー紹介
パーソルキャリア株式会社
タレントシェアリング事業部
Business Innovation統括部
HiPro Closed Platform部
ゼネラルマネジャー
氏名:片山 徹之 様
パーソルキャリア株式会社
タレントシェアリング事業部
Business Innovation統括部
HiPro Closed Platform部
セールスグループ マネジャー
氏名:宮内 裕多 様
パーソルキャリア株式会社
タレントシェアリング事業部
Business Innovation統括部
HiPro Closed Platform部
カスタマーサクセスグループ マネジャー
氏名:大友 真理江 様
株式会社Third Base
代表取締役
氏名:今村 将人(聞き手)
株式会社Third Base
ディレクター
氏名:勝林 優斗(聞き手)
※ 部署名・役職は2026年3月の取材時点
プロジェクト発足の背景
28社114案件の実証実験が示した、「知っている相手となら踏み出せる」という手応え
Q(今村):まずは「HiPro」という事業と、その中での相互副業プロジェクトの位置づけを教えてください。
A(片山様):HiProは、プロフェッショナル人材の総合活用支援サービスです。「スキル循環社会」を掲げ、週5日フルタイムの雇用を前提としない人材活用や、個人から見れば副業といった新しい働き方を広げてきました。
ただ、大企業の副業解禁が進む一方で、受け入れている会社はまだ多くありません。いきなり、まったく知らない外部のプロ人材の力を借りるのは、企業にとってハードルが高いのです。そこで、グループ内や社内、顔の見える会社の社員の方といった、一歩を踏み出す前の「0.5歩目」の人材活用から始めたい。それが相互副業プロジェクトの出発点です。
Q(今村):直接のきっかけは、コンソーシアムでの実証実験だったと伺っています。
A(片山様):2022年に当社を含む8社で「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」を発足し、企業間での相互副業の実証実験を重ねてきました。その過程で28社114案件128名のマッチングが生まれました。
そこで分かったのは、知らない会社に社員を送り出すより、知っている会社とのほうが圧倒的に送り出しやすいということ。受け入れる側も同じで、その安心がマッチングを前に進めていました。
Q(今村):オープンなプラットフォームである「HiPro Direct」との違いも教えてください。
A(片山様):HiPro Directは、不特定多数の企業と個人がオープンにマッチングするモデルです。対してクローズドは、あえて参加企業を限定する。信頼関係のある企業間だけで完結するからこそ、安心・安全が担保されます。ビジネスモデルとしては、参加いただく企業から月額の利用料をいただき、あとは自由にマッチングしていただく形です。
加えて、私たちが事務局として介在します。テーマの一つが越境学習だからです。一歩外へ出ていただくだけでは、自分ごとにはなりません。だから導入説明会や振り返りまでをセットにしています。

パーソルキャリア株式会社 タレントシェアリング事業部 Business Innovation統括部 HiPro Closed Platform部
ゼネラルマネジャー 片山 徹之 様
|ローンチまでの半年
戦略もビジネスモデルも、走りながら固めていった
Q(今村):2024年5月の事業戦略発表会で「今夏リリース」と宣言されました。
A(片山様):当時の戦略書を見返すと、プライシングも、どう売るかの座組みも、これから詰めていく段階でした。その中で、リリース時期だけが先に決まっている。結果的には段階的なリリースにし、10月に提供を開始しました。
難しかったのは、規模です。「まずは小さく試してみればいい」というリーンな進め方が通用しない。組織を作っていただいた分、期待も大きい。どこを狙い、周りにどう動いてもらうのか、戦略と戦術を立てないと動かせません。自分たちの解像度も高くない中で、不安を抱えながら進める難しさがありました。
Q(今村):戦略書も、通常なら2〜3ヶ月かけるものを実質2週間で書き上げましたよね。宮内さんも同じ4月に、戦略のど真ん中という一番重い役割でアサインされました。
A(宮内様):4月のある日、体制図に自分の名前が入っているのを見て合流した、という形でした。
私はHRにいながら、ずっと採用領域をやってきた人間です。このサービスは副業領域でありながら、実際には人材戦略や人的資本経営のど真ん中に刺そうとしている。社員が副業する良さは、概念としては分かっていたけれど、自分の言葉で語れるレベルまで解像度を上げられていなかったんです。それでもリリースは迫る。視座の足りなさと、駆け抜けていく戦略とのギャップには、かなり苦しみました。
救われたのは、実証実験に参加してくださった企業さんの声を直接聞きに行けたことです。生の声をそのまま持ち帰って今村さんと壁打ちし、そこから視座を引き上げていく。あのプロセスが、振り返ると一番大きかった。
Q(今村):立ち上がりの初期は、有志の方々がプロボノで参画されていました。大友さんは、なぜ手を挙げられたのでしょうか。
A(大友様):お客様にとって絶対に良いものだと思ったからですね。良いと思ったら、まず飛び込んでしまうタイプなんです。
A(宮内様):ただ、あとから入る側は心理的な障壁が高いんですよ。私が入った時点で営業資料はすでにあり、構想も想いもある。一方、こちらは「人的資本経営とは何か」から始める人間が、リードを任されている。それでも、皆さんが自分ごととして協力してくださいました。
今村:このお話は、いろいろな会社さんでさせていただいています。ゼロイチで想いを持った方が最初から入っていると、1から10のフェーズで一気に広がる。そのとき片山さんと宮内さんが素晴らしかったのは、配慮はものすごくされているのに、遠慮はしないこと。一人のメンバーとして境なく期待し、議論されていました。
A(宮内様):私たちが描きたい世界観の本質も、そこなんです。本業が100になった瞬間に、視野は狭くなり、能力開発も止まりやすい。社内副業と転職の中間地点をつくるのが、私たちの使命だと思っています。

パーソルキャリア株式会社 タレントシェアリング事業部 Business Innovation統括部 HiPro Closed Platform部
セールスグループ マネジャー 宮内 裕多 様
|有償受注の積み上げへ
立ち上がりの属人的な営業を、事業をリードするための型に変える
Q(勝林):私が参画したのは2025年2月。有償でのご契約はこれから積み上げていく、という状態からのスタートでした。期初時点での目標感と、感じられていた壁を教えてください。
A(片山様):コンソーシアムから引き継いだ参加企業があり、「立ち上げたけれど誰もいない」という状態ではありませんでした。ただ、そこは実証実験の延長で、費用をいただいているわけではない。有償でのご契約はこれから、というのが当時の実態でした。楽観的に見れば伸びしろは十分にある、厳しく見ればかなり苦しい。その両方がある中で、目標だけを楽観側に置いてしまった。
KPIやアポイントの準備などもあわただしく進む中で、数字に追われた面は反省として残っています。2025年度の論点は、有償のお客様を新しく開拓していくこと。実証実験の参加企業に費用をいただく形への移行も進めつつ、主戦場はあくまで新規開拓でした。そこは勝林さんに、1回目・2回目の商談の質まで踏み込んで見ていただきました。
A(宮内様):期初時点では、どんな売り方ができるのかが分からないフェーズでした。キャリア自律で売るのか、外部人材活用で売るのか。提案しながら示唆を取りにいくしかない。ただ、件数にもアポ準備にも追われる中で、示唆出しまでは設計できていなかった。そこをフラットに見てくれる人がいなかったんです。
どれだけ簡単にやりながら示唆が得られる状態をつくるか。その整理・整備をしていただきました。これは営業支援でも、営業コンサルでもないんですよね。事業をリードするために必要だったものです。
Q(勝林):当初は人事の方が中心だと思っていたものが、振り返りと示唆出しを重ねるうちに、新規事業部門などにもニーズが見えてきましたよね。
A(宮内様):提案の品質といっても、きれいな資料ができたという話ではありません。どういう論理で提案するのか、という部分でメンバーが一段引き上がりました。資料より、「これがフックになるのか」と学び取るプロセスのほうが大きかったと思います。
|FS/CSの組織分割
論点をシャープにし、それぞれのPDCAを回し切る。CSの打ち手を「マッチング」と定義し直す
Q(勝林):2025年6月には、FS(フィールドセールス)とCS(カスタマーサクセス)を組織として分ける意思決定をされました。
A(片山様):一番混沌としていた時期です。手を打たなければいけない。ただ、その手が本当にFS/CSの分割なのかも含めて、正解がない。要因を細分化して、一つひとつの徹底度を上げにいった、という感覚です。
A(宮内様):たとえばCSでは、「CSにできることは何か」に立ち返り、案件数も重要だが、その本質はマッチングであると定義できた。以降、精度が一気に上がったのは大きな成果でした。
FSも、人を分け、資料を変え、ターゲティングを決める。注力すべき領域とそうではない領域を明確にする、という解を出せたことが、新規事業のフェーズでは何より大事でした。
Q(勝林):大友さんは下期からCSのマネジャーを務められました。マネジャーとして難しかったのは、どのような点でしたか。
A(大友様):私はもともと感覚で動くタイプで、「なぜその打ち手なのか」をメンバーに説明しきれないことが一番の課題でした。そこを一緒に整理していただけたのが大きかったです。
もうひとつ、会議までの整理や裏側は手伝ってくださるのに、会議の場での話者は必ず私にしてくださった。メンバーは、誰が何を話しているかを本当によく見ています。おかげで、私が前に立って組織を動かす形を崩さずに済みました。

パーソルキャリア株式会社 タレントシェアリング事業部 Business Innovation統括部 HiPro Closed Platform部
カスタマーサクセスグループ マネジャー 大友 真理江 様
|外部パートナーの価値
「摩擦ではなく、フラットに引き戻す」。2年間、同じ方向を向き続けた第三者の距離感
Q(今村):2年間ご一緒してきて、外部の人間が入ることの良い面と、その逆を率直にお聞かせください。
A(宮内様):私も片山も自分でプロダクトを作った経験がありますが、そのときはフル内製でした。同じ目線を向いているので推進はしやすい。でも、自分たちの在りたいゴールに、すべてを紐づけようとして視野が狭まるんです。
お二人は、私たちが暗黙知で「このモデルで行こう」となったときに、論点とメリット・デメリットを書き出して示してくださる。答えはここにあるんだろうけれど、その論理はどこにあるんだっけ、と常に問われる。暗黙知のまま進められる内製では、できないことです。
ただ、一般解から「こちらのほうがいい」と示されるだけなら、それは摩擦になります。摩擦ではなく、同じ方向を向いたうえでフラットに引き戻してくれた。
A(宮内様):お二人とも、周辺情報を取りに来てくださっていました。窓口の私と片山だけでなく、統括部の他のメンバーとも、雑談を含めて日常的に話されていた。お二人は私たちの組織に向き合い、その中の位置づけとしてこの事業を見てくださっていた。
私たちのやりとりは、放っておけば報告になってしまう。雑談ごと付き合ってもらえることは、遠回りに見えて一番近い道なのかもしれません。
A(片山様):事業側には、この事業は良いものだと強く信じることが必要な場面が絶対にあります。でも、それだけだと良くない道に行ってしまう。
面白いのは、お二人が持ち込んでくださるものが違うことですね。勝林さんは想いごと引き受けて、一緒に走ってくれる。正直、そのままうちの社員として一緒にやりたいくらいです(笑)。今村さんは、同じ熱量で走りながら、ここぞという場面で一歩引いた視点を差し込んでくれる。その両方があったから、道を外さずにいられました。
A(大友様):組織運営でも助けられました。「メンバーから直接は言ってもらえていない本音があるかもしれない」というときに、第三者として聞いてもらう。内部だけだったら、声が上がらないままだったと思います。
今村:別の新規事業の方と話していて出たのが、「新規事業の担当者は、その事業が良いと誰よりも信じ切らないといけないが、視野を狭めてはいけない」という言葉でした。世界で一番いいと信じ切っていなければ、誰も賛同してくれない。だから信じ切っていい。そのうえで、外から健全な問いを受けて、狭まった視野を広げ直す。実は私自身も外部のコンサルタントをつけていて、自社のことになると視野が狭くなると痛感しています。構造的に、第三者は必要なんだと感じています。

株式会社Third Base 代表取締役 今村 将人
|2年間の総括
当初描いた成長曲線ではなかった。それでも価値は確信できた。残った型と、これからの伸びしろ
Q(勝林):率直に、この2年間を振り返っていかがでしたか。
A(片山様):当初描いていた成長曲線の通りに進んだ2年ではありません。ただ、難しいものに挑戦していた分、得たものも大きかった。参加してくださった方々のリアルな声に触れるほど、越境そのものの価値は確信できましたし、ここからの伸びしろも見えています。
A(宮内様):事業としては苦しかった。でも、久しぶりにものづくり・ことづくりをしている感覚があって、濃い時間でした。
事業の可能性を本気で信じてくれている人が、外部のパートナーとして隣にいる。それが、苦しい局面を越える力になりました。
ムーブメントで終わらせず、ちゃんと根付く状態までデザインしたい。2年間、ずっとそれを考えていました。
A(大友様):目に見える成果が積み上がる前から、「可能性があるから」と予算を取ってきてくれる人たちがいました。嬉しさと責任の両方がありましたが、あの状況でお客様に向き合い続けた経験は、いまの自分の芯になっています。
今村:この事業は、顕在化した市場に後から参入するものではなく、市場そのものをつくろうとするものでした。お客様が共感してくださっても、法人として導入するには社内でも戦わなければいけない。それだけ難しい挑戦に、皆さんは正面から向き合ってこられました。市場そのものはこれから育っていく領域で、伸びしろはまだ大きいと思っています。
勝林:合宿に参加させていただいたり、展示会にもご一緒させていただいたりと、社員の一人のように受け入れていただきました。夏頃は外苑前のオフィスに入り浸りすぎて、久しぶりに自社へ顔を出したときに今村から「たまにはうちにも来なさい」と言われたほどです(笑)。それくらい深く入らせていただけたことは、私にとって大きな財産です。

株式会社Third Base ディレクター 勝林 優斗
今村:この2年間は、私たちにとっても特別な時間でした。市場そのものがこれからという領域で旗を立て続けている皆さんの姿からは、学ばせていただくことの方が多かったと思っています。これからの広がりを、引き続き楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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