本記事では、Step2「事業企画(アイデアを事業モデルと計画に落とし、PoCに進めるかを判断する段階)」の4つ目の工程である「妥当性・実現性検証」を解説します。2-3で組んだ事業モデルと計画が、顧客・有識者・協業先の目から見て成り立つかを確かめ、必要なパートナーを固める工程です。
はじめに. 机上の計画を、外の人の目を通して確かめる
2-Cまでで、事業モデルと収益計画は一通り組めています。しかし、それは机上の仮説にすぎません。この工程では、顧客・有識者・協業先との会話を通じて、事業モデルの「妥当性(顧客に受け入れられるか)」と「実現性(実際に作って回せるか)」を検証します。そこでThird Baseでは、妥当性・実現性検証を次の2つに分けて進めることを勧めています。
- 顧客・有識者インタビュー:ニーズの把握、市場理解、実現可能性の検討を目的に、潜在顧客・既存顧客・業界有識者から話を聞く
- 協業先タッピング:パートナーシップの模索、事業の信頼性向上、事業推進力の強化を目的に、技術・販売・マーケティングのパートナー候補や関連企業、投資家に当たる
ここで大事なのは、1-4の初期評価と同じ「インタビュー」でも、目的・相手・量が大きく変わる点です。初期評価は「次に進むか」を速く粗く決める検証でしたが、ここでは事業モデルの各要素(ターゲット、提供価値、価格、チャネル、オペレーション)を1つずつ確かめる、深く重い検証になります。

本記事は次の2つの工程に分けて解説します。
- D-1|顧客・有識者インタビュー:事業企画フェーズ固有の差分(目的・相手・探し方・論点・量・アウトプット)
- D-2|協業先タッピング:パートナー候補の絞り込み → 提携スキームの選択 → 基本合意書(MOU) → NDA
D-1│顧客・有識者インタビュー
インタビューは、初期評価フェーズ(1-D)と事業企画フェーズ(本記事)で同じ5ステップの型を使いますが、設定が異なります。
| 項目 | 初期評価フェーズ(1-D) | 事業企画フェーズ(本記事) |
|---|---|---|
| 目的 | Step2(事業企画)に進むべきかの判断 | 事業モデルの妥当性・実現性の検証 |
| 検証対象 | 課題の存在と解き方の筋を、定性中心にクイックに確かめる | ターゲット・提供価値・価格・チャネル・オペレーションなど、事業モデルの各要素を定量も含めて確かめる |
| 相手 | 想定顧客が中心 | 顧客に加え、業界有識者、協業先候補 |
| 論点の立て方 | 5つの評価観点から論点を設定する | イシューツリーで論点を構造的に分解する |
| 量の目安 | 判断に足りる範囲でクイックに | クイックに5人程に実施し、大枠を把握。その後も継続し、累計100人単位 |
インタビュー検証の進め方については 1-D│アイデア検証 の記事を参考にしてください。
D-2│協業先タッピング
パートナー候補の絞り込み:ロングリストから優先順位をつける
ロングリストを作成し、適切なスクリーニングを通して、優先度の高い候補先へタッピング(打診)を行います。

3つのステップで絞り込みます。
①ロングリスト作成:質にこだわらず候補先を抽出する(例:50社)。
②タッピング先の絞り込み:適切な選定条件を設定し、適度な候補数まで絞り込む(例:選定条件①で15社、選定条件②で5社)。
③優先順位づけ:交渉の優先度を決める(第1優先:A社、第2優先:B社…)。
タッピングは、リハーサルも兼ねて、中位程度の優先度の候補先から始めます。
提携スキームの選択:協業内容と双方の状況から選ぶ
協業の内容だけでなく、自社・協業先の状況も踏まえて、最適な提携スキームを選びます。スキームは大きくM&A(合併・買収)とアライアンス(提携)に分かれ、支配権の獲得、法人格の消滅、資本関係、共同出資会社の設立の有無で整理できます。

スキームは、どこまでの支配力・拘束力が必要か(協業内容)と、自社・協業先がどこまでの資本関係や手続きを受け入れられるか(双方の状況)の2つから選びます。
基本合意書(MOU):最終契約に向けて、おおまかな合意を固める
基本合意書(MOU)とは、最終契約に向けた活動について、双方の合意形成を図るために締結するものです。おおまかな契約内容・方針が固まったタイミングで締結します。ひな形を活用しながら、必要な情報を記載して作成・締結します。

一般的な記載項目は13です。目的(提携の背景・目標・期待する成果)、提携内容(出資比率や出資額、共同で行う事業や役割分担)、役割・責任、スケジュール、条件・前提事項(デューデリジェンスなど)、機密保持、独占交渉権(一定期間、第三者と同様の交渉を行わない義務)、費用負担、法的拘束力(全体または一部が法的拘束力を持つか)、有効期間、準拠法・裁判管轄、解約条項、その他特記事項です。
NDA:基本合意書より前に、秘密情報を守る
秘密保持契約(NDA)とは、取引などを通じて開示される秘密情報について、目的外の利用や漏えいを防止するために締結するものです。基本合意書の締結前から締結することが重要です。

一般的な記載項目は8つです。契約の当事者と目的、秘密情報の定義・内容、秘密保持義務と目的外使用の禁止、知的財産権の帰属(秘密情報の開示を伴う取引で特許等が発生する際のルール)、有効期限と秘密保持義務の存続(取引後を含めた存続期間)、秘密情報の返還・廃棄、損害賠償、紛争解決(第一審の専属管轄裁判所)です。
まとめ
妥当性・実現性検証では、事業モデルの各要素を外の人の目で1つずつ確かめ、必要なパートナーを固めることが大事です。1-Dの初期評価と同じ型を使いますが、目的・相手・量は別物です。いま検証に入る方は、次の点を見直してみてください。
- インタビューの目的を「何を決めるために、何を解明するか」まで書いているか
- 論点をイシューツリーで分解し、事業モデルのどこが決まるかに紐づけているか
- 相手を顧客・有識者・協業先候補に広げ、有償ルートも使って必要な人数に当たっているか
- サマリーを論点ベースで、空気感と示唆まで書いているか
- 協業先候補をロングリストから絞り、スキームを選び、NDA・MOUの準備をしているか
- 検証結果を受けて、事業モデル・計画(2-3)のどこを直すかを決めたか
Third Baseではこれまで「新規事業をどう進めればいいか分からない」「スピード感を持って進めたい」といったご相談をいただき、メンタリングや伴走など様々な形で支援してきました。新規事業開発でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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