本記事では、Step2「事業企画(アイデアを事業モデルと計画に落とし、PoCに進めるかを判断する段階)」の最後の工程である「事業性判断」を解説します。市場・自社の分析と事業モデル・計画、その検証結果を踏まえて、Step3(PoC)に進めてよいかを4つの観点で判断する工程です。
はじめに. 「PoCに進めるか」を、収益だけで決めない
事業企画の最後は、PoC(実証)に進めるかどうかの判断です。ここで収益性の数字だけを見て決めると、新規事業の目的(1-A)で確認した「既存事業への波及効果」や「自社がやる意義」が抜け落ちます。逆に意義だけで進めると、投資に値しない事業に資源を投じることになります。そこでThird Baseでは、事業性を次の4つの観点で判断することを勧めています。
- 収益性:売上とコストから、事業が持続可能か、投資に値するかを判断する
- 副次的価値:他事業へのシナジーや社会的価値の有無から判断する
- リスク:リスク一覧を作成し、対応策の妥当性から判断する
- 自社がやる意義:意義の有無から判断する
ここで大事なのは、4つの観点が1-1で確認した新規事業の目的と対応していることです。収益性は「単体収益(a)」と「水準・期限・投資規模」に、副次的価値は「既存事業への収益的価値(b)・非収益的価値(c)」に、自社がやる意義は2-Bで特定した「意義」に、それぞれつながります。判断の基準は、この工程で新たに作るものではなく、1-Aで経営層と合意した目的に立ち返って決めます。

本記事では、次の4つの観点に分けて解説します。
- E-1|収益性:ROI・IRRからの定量判断
- E-2|副次的価値:他事業へのシナジーと社会的価値
- E-3|リスク:リスクの洗い出しと対応戦略
- E-4|自社がやる意義:目指す姿との整合
E-1│収益性
ROI・IRRで定量的に判断する
収益性は、ROIやIRRなどの指標から、事業内容を踏まえて定量的に判断します。

ROIは短期的な効率を見る指標、IRRは長期的な投資のリターンを評価する指標です。2-3で作った収益シミュレーション(楽観・ベース・悲観)を入力にして、両方を算出します。
判断の基準は、1-1で確認した投資規模(投資上限、許容赤字額、整合の目安)です。「ベースパターンで投資上限の範囲に収まり、許容赤字額と黒字化時期を満たすか」「悲観パターンでも撤退基準(損益分岐点)を割り込まないか」を見ます。
よくあるつまずき:
楽観パターンの数字で収益性を判断してしまうことです。投資判断はベースパターンで行い、悲観パターンで「最悪どこまで耐えられるか」を確認します。また、ROIが高くても投資額が小さすぎて目標の水準に届かない案は、1-1の「投資に対して目標が小さすぎないか」の観点で見直します。
E-2│副次的価値
他事業へのシナジーと社会的価値を評価する
副次的価値とは、新規事業単体の収益以外に、その事業が会社にもたらす価値です。1-Aで整理した「既存事業への収益的価値(b)」と「既存事業への非収益的価値(c)」がこれに当たります。
評価は2つの観点で行います。①他事業へのシナジー:既存事業の売上増やコスト削減への貢献を、2-2で区別した相補効果(補い合う、1+1=2)と相乗効果(掛け合わさる、1+1=3以上)のどちらか、どの資源が生むのかまで具体的に書く。②社会的価値:企業ブランドの強化、株主・社会からの評価、技術・特許の獲得など、社会的な受け入れやステークホルダーの支持が得られるかを評価する。
1-Aで「単体収益を前提に、副次的に既存収益や既存非収益も狙う」と合意している場合、ここでの評価は「副次的な価値がどれだけ上乗せされるか」の確認です。副次的価値だけで事業性を正当化しないよう注意します。
E-3│リスク
リスクを洗い出し、対応戦略まで決める
リスクは、洗い出しから対応戦略まで十分に検討されているかどうかで判断します。

上の7つ以外にも、法・政治、技術、環境など様々な観点があるため、事業に合った観点でリスクを洗い出します。洗い出したリスクには、回避、転嫁、軽減、受容の4つの対応戦略のどれを取るかを決めます。
市場・競合・協業者・ヒト・モノ・カネ・社会的責任などの観点でリスクを洗い出し、1つずつに回避・転嫁・軽減・受容のどれで対応するかを決めます。対応策まで決まっているかどうかが、判断の基準です。
E-4│自社がやる意義
自社がやる意義は、2-Bで「目指す姿(企業・事業部のミッション、中計、ポートフォリオ戦略)と検討事業の整合性」として一文にしたものです。事業企画を進める中で、事業モデルやターゲットは当初から変わっていることが多いため、ここで改めて確かめます。
2-Bで書いた意義の一文を、2-Cで固めた事業モデルと2-Dの検証結果に照らして見直し、いまの事業内容でも「なぜ自社がやるのか」が説明できるかを確認します。説明できなければ、意義を書き直すか、事業モデルを目指す姿に寄せます。
まとめ
事業性判断では、収益性・副次的価値・リスク・自社がやる意義の4つをそろえて、PoCに進めるかを決めることが大事です。判断の基準は新しく作るものではなく、1-Aで経営層と合意した目的に立ち返ります。いまPoCへの移行を判断しようとしている方は、次の点を見直してみてください。
- ROI・IRRを、楽観・ベース・悲観の3パターンで算出しているか
- ベースパターンが、1-1で確認した投資上限・許容赤字額・黒字化時期の範囲に収まっているか
- 副次的価値を、どの資源がどんなシナジーを生むのかまで具体的に書いているか
- リスクを洗い出し、1つずつに回避・転嫁・軽減・受容の対応を決めているか
- 自社がやる意義を、いまの事業モデルで説明できるか
- 4つの観点の評価結果と「PoCに進める/進めない」の判断を、意思決定者と合意したか
Third Baseではこれまで「新規事業をどう進めればいいか分からない」「スピード感を持って進めたい」といったご相談をいただき、メンタリングや伴走など様々な形で支援してきました。新規事業開発でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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