2-B│自社分析

2-B│自社分析

本記事では、Step2「事業企画(アイデアを事業モデルと計画に落とし、PoCに進めるかを判断する段階)」の2つ目の工程である「自社分析」を解説します。市場分析(2-1)で外を見た後に、自社の中を見て「何で勝てるのか」「なぜ自社がやるのか」を言葉にする工程です。

はじめに. 「できる」ではなく「勝てる」根拠を、自社の中から見つける

市場分析で市場と競合を理解しても、それだけでは「自社がやる理由」は説明できません。同じ市場を見ている競合に対して、自社は何で勝てるのか。そして、その事業は自社が目指す姿に沿っているのか。この2つに答えるのが自社分析です。

自社分析の目的は3つあります。1つ目は意思決定の指針を持つこと。意義が明確であれば、プロジェクトを進めるか止めるかの判断基準になります。2つ目はステークホルダーへの説明材料を持つこと。なぜ自社が取り組むかを伝えられれば、社内外の理解を得やすくなります。3つ目は競争優位性の源泉を見つけること。自社特有の強みが活きるポイントを掘り起こせば、競争力のある事業を展開できます。そこでThird Baseでは、自社分析を次の2つに分けて進めることを勧めています。

  • 自社の優位性の特定:保有するアセット(資産・能力)を洗い出し、競合と比べて強みと言える要素を評価する
  • 自社が取り組む意義の特定:自社が目指す姿を確認し、検討事業との整合性を評価する

ここで大事なのは、1-Bで決めた立ち位置(何屋さんか)や、1-Cのアドバンテージドリブンなどで棚卸ししたアセットがあれば、それを起点に深めることです。Step1の検討は「あたり」をつける粒度でしたが、ここでは競合との比較を入れて「勝てる」と言える根拠まで詰めます。

本記事は次の2つの工程に分けて解説します。

  • B-1|自社の優位性の特定:3つの導出観点(バリューチェーン分析、VRIO、アセットの整理手法)で強みを洗い出し、評価する
  • B-2|自社が取り組む意義の特定:目指す姿と検討事業の整合性を評価する(シナジーの考え方を含む)

B-1│自社の優位性の特定

導出観点①:自社バリューチェーン分析

自社のアセットをバリューチェーンごとに洗い出し、競合と比べて強みと言える要素を、検討事業の戦略に落とし込みます。バリューチェーン分析とは、価値を生み出す全活動(購買、製造、販売、サービスなど)を「バリューチェーン」として捉え、各プロセスが付加価値の創出やコスト構造にどう影響するかを分析する手法です。ポーターが提唱したモデルで、主活動(製造・販売関連)と支援活動(人事・調達・技術開発など)に分けて、競争優位性の源泉や改善の余地を特定します。

分析は4つのステップで進めます。①対象事業の主活動・支援活動を明確にする。②コスト構造と差別化できる要因を洗い出す。③競合と比較し、強み・弱みを見つける。④具体的な施策を検討し、価値創造につながる戦略に落とし込む。

バリューチェーンの区切り方は業界によって異なります。上の主活動(購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→サービス)と支援活動(全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動)は製造業の一例で、自社の事業内容に合わせて組み替えます。

分析例(トヨタ自動車):購買物流ではサプライヤーの「協力工場」化とJIT(ジャスト・イン・タイム)生産方式、製造ではトヨタ生産方式(無駄の徹底排除と「問題があれば止めてでも改善する」仕組み)、出荷物流では世界的な販売・流通ネットワークと現地生産・現地販売、販売・マーケティングでは「壊れにくい」「燃費が良い」というブランド信頼性、サービスではディーラーによる充実したアフターサービスと、5つの主活動それぞれに高いレベルのアセットを保有していることが読み取れます。

よくあるつまずき:

自社の活動を並べただけで「強み」と呼んでしまうことです。強みは競合との比較で初めて決まります。③の比較を飛ばすと、どの会社にもある活動が優位性として計画に載ってしまいます。

導出観点②:VRIOで強みを評価する

洗い出したアセットの評価には、VRIOの4つの観点が有効です。VRIOは、内部の経営資源を評価するフレームワークです。

洗い出したアセットを、経済価値・希少性・模倣困難性・組織性の4つの問いで評価します。4つすべてを満たすアセットが、持続的な競争優位の源泉になります。

よくあるつまずき:

「価値がある(V)」だけで強みと判定してしまうことです。顧客に価値があっても、競合も同じものを持っていれば(希少性なし)、あるいはすぐ真似できれば(模倣困難性なし)、優位は続きません。4つの問いは順番に絞り込むように使います。

導出観点③:バリューチェーンにこだわらず、アセットを整理する

既存事業の内容によっては、バリューチェーンの枠に当てはめにくいアセットもあります。その場合は、バリューチェーンにこだわらず、適切な手法でアセットを整理します。アセットの分類の例は次のとおりです。

この分類を棚卸しのチェックリストとして使い、抜けているアセットがないかを確認します。洗い出したアセットは、導出観点②のVRIOで評価します。

1-Cのアドバンテージドリブンなどでアセットの棚卸しをしている場合は、その一覧を起点にして、ここで競合比較とVRIO評価を加えます。

B-2│自社が取り組む意義の特定

目指す姿を確認し、検討事業との整合性を評価する

自社が取り組む意義とは、「なぜ他社ではなく自社がこの事業をやるのか」に対する答えです。優位性(B-1)があっても、会社が目指す方向と合っていなければ、投資判断の場で「うちがやる意味は?」と問われて止まります。

意義の特定は3つのステップで進めます。
①目指す姿を確認する:企業のミッション・ビジョン、事業部のミッション、中期経営計画、事業ポートフォリオ戦略から、会社が向かおうとしている方向を確認する(1-Aで確認した新規事業の目的もここに含まれる)。
②検討事業を照らす:検討事業の内容と、アプローチする顧客課題が、目指す姿に一致しているかを評価する。
③意義を一文にする:「自社の技術・アセットを活用した新たな価値提供」「既存事業とのシナジー」「社会課題の解決」などの型を参考に、自社が取り組む意義を一文で書く。

新規事業における意義の型には、自社の技術・アセットの活用、既存事業とのシナジー効果、社会課題の解決などがあります。どの型に当たるかを明確にしておくと、Step2の最後の事業性判断(2-E)で「自社がやる意義」を評価する際に、そのまま使えます。

(参考)シナジーとは:相補効果と相乗効果

意義の型の1つである「既存事業とのシナジー」について、言葉の意味を押さえておきます。シナジーには広義と狭義があります。

「シナジーがある」と言うときは、相補効果(補い合う)と相乗効果(掛け合わさる)のどちらを指しているかを区別して書きます。

1-Aで確認した「既存事業への収益的価値(b)」「非収益的価値(c)」を狙う場合、その根拠がここで言うシナジーです。どの資源が、どちらの効果を生むのかまで言えると、2-Eの評価が具体的になります。

まとめ

自社分析では、競合と比べて「勝てる」と言えるアセットを見つけ、その事業を「自社がやる意義」を一文にすることが大事です。「できる」だけでは投資判断は通りません。いま自社分析に取り組んでいる方は、次の点を見直してみてください。

  • アセットをバリューチェーンまたは14分類で洗い出し、抜けがないか確認したか
  • 洗い出したアセットを競合と比較し、VRIOの4つの問いで評価したか
  • 企業・事業部のミッション、中計、ポートフォリオ戦略から、目指す姿を確認したか
  • 検討事業と目指す姿の整合性を評価し、意義を一文で書けているか
  • 「なぜ自社がやるのか」を、経営層・関係部門に一文で説明できるか

Third Baseではこれまで「新規事業をどう進めればいいか分からない」「スピード感を持って進めたい」といったご相談をいただき、メンタリングや伴走など様々な形で支援してきました。新規事業開発でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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